この記事のポイント
- 高齢者の住まいは大きく「特養」「サ高住」「有料老人ホーム」の3タイプに分かれる
- 特養は費用を抑えやすいが、原則要介護3以上で入居待ちになることもある
- サ高住の家賃・共益費・サービス費は全国平均で月約11万円。食費などは別にかかる
- 有料老人ホームは選択肢が広い分、費用の幅がもっとも大きい
- どの施設でも「月額表示」と「実際に毎月かかる総額」は違う。内訳の確認が大切
これまでの記事では、親御さまの実家を「売る・貸す・そのまま」のどれにするか、そして貸す場合のリスクや初期費用についてお伝えしてきました。今回は視点を変えて、住まいの受け皿となる「施設」側のお話です。
施設探しを始めると、「有料老人ホーム」「サ高住」「特養」という3つの言葉が出てきます。それぞれ仕組みも費用も違い、初めての方には違いが分かりにくいかもしれません。この記事では、公的なデータをもとに3タイプの違いと費用の目安を整理します。
まず全体像:3タイプの違いを一覧で
細かい話に入る前に、3つのタイプをざっくり比較しておきましょう。
| 特別養護老人ホーム (特養) |
サービス付き 高齢者向け住宅 (サ高住) |
有料老人ホーム | |
|---|---|---|---|
| 運営 | 社会福祉法人・自治体など(公的施設) | 民間事業者(高齢者向けの賃貸住宅) | 民間事業者 |
| 入居の条件 | 原則、要介護3以上 | おおむね60歳以上。自立〜介護度が軽めの方が中心 | 施設による(自立の方向けから介護専用まで幅広い) |
| 初期費用 | 入居一時金なし | 敷金(家賃の数ヶ月分)程度が中心 | 0円〜数百万円以上まで施設により大きく異なる |
| 月額の目安 | およそ10〜15万円 (所得により軽減あり) |
家賃等で平均約11万円 +食費・介護費など |
千葉県北西部4市の中央値で 介護付 約17〜20万円 住宅型 約13〜15万円+介護費 (施設により幅が大きい) |
| 入居のしやすさ | 入居待ちになることがある | 空き状況や入居の条件は施設ごとに確認 | 施設数が多く、選択肢が広い |
※金額はいずれも目安です。地域・施設・要介護度・所得により大きく変わります。出典は記事末尾に記載しています。
特養:費用を抑えやすいが「要介護3以上・入居待ち」の壁
特別養護老人ホーム(特養)は、社会福祉法人や自治体などが運営する公的な介護施設です。入居一時金が不要で、月々の費用も介護保険のルールに沿って決まるため、3タイプの中ではもっとも費用を抑えやすい施設です。終身での利用ができる点も特徴です。
月額費用の内訳
毎月かかる費用は、大きく分けて「介護サービス費(1〜3割の自己負担)」「居住費(家賃にあたる部分)」「食費」「日常生活費」の4つです。
このうち居住費と食費には、厚生労働省が定める「基準費用額」という標準額があります(2026年8月の改定後)。4つの費用の目安は次のとおりです。
居住費(家賃にあたる部分)
約2.8万〜6.3万円
1か月あたり。1日915円〜2,066円(居室のタイプによる)
食費
約4.7万円
1か月あたり。1日1,545円
介護サービス費の自己負担
2万円台
1か月の目安(要介護3・1割負担の場合)
日常生活費
日用品などの実費
合計すると、相部屋タイプ(多床室)ならおよそ月10万円前後、個室でユニットケアを受けられるタイプ(ユニット型個室)なら月13〜15万円程度が目安になります。所得の低い方には負担限度額の制度(補足給付)があり、これより大きく軽減される場合もあります。
「特養は安い」は半分だけ正解
注意したいのは、入居のハードルです。特養は原則として要介護3以上の方が対象で、地域や施設によっては入居まで長い待機期間が発生します。また、費用を抑えられるのは主に多床室の話で、近年増えているユニット型個室は、所得によっては民間施設とあまり変わらない金額になることもあります。「特養だから安い」と思い込まず、居室タイプごとの金額を確認することが大切です。
サ高住:自由度が高い「賃貸住宅」。ただし月額表示に含まれない費用に注意
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、施設というより「見守りサービスの付いたバリアフリーの賃貸住宅」です。契約も一般の賃貸住宅と同じ賃貸借契約が基本で、外出や外泊の自由度が高いのが特徴です。不動産の立場から見ると、3タイプの中でいちばん「住まい」に近い存在といえます。
国土交通省の資料(2023年8月末時点の登録情報)によると、家賃・共益費・サービス費(見守り・生活相談)を合計した入居費用は全国平均で月額約11万円、大都市圏では平均約12.7万円です。
「約11万円」に含まれていないもの
ここで注意したいのが、この金額は家賃・共益費・サービス費だけの合計だという点です。実際の生活では、これに加えて次の費用がかかります。
- 食費(食事の提供を受ける場合)
- 水道光熱費(共益費に含まれない場合)
- 介護保険サービスの自己負担(外部の訪問介護などを利用した分だけ発生)
- 医療費・日用品などの実費
これらを合わせると、実際の毎月の支払い総額は表示の金額より大きくなります。また、サ高住には安否確認と生活相談が中心の「一般型」と、スタッフから直接介護を受けられる「介護型」があり、介護型は月額が高くなることがあります。
有料老人ホーム:選択肢が広い分、費用の幅がもっとも大きい
有料老人ホームは民間事業者が運営する施設で、施設数が多く、サービス内容もグレードもさまざまです。スタッフが常駐して介護サービスを提供する「介護付き」と、生活支援が中心で介護は外部サービスを利用する「住宅型」に大きく分かれます。
費用については、入居一時金が0円の施設から数百万円以上かかる施設まであり、月額にも大きな幅があります。参考までに、千葉県のオープンデータで松戸市・船橋市・柏市・鎌ケ谷市の施設を集計すると、県の一覧に載っている月額のうち最も低い金額(中央値)は、介護付で約17〜20万円、住宅型で約13〜15万円でした(前払金を払って月額を抑えるプランの金額の場合があり、入居一時金0円のプランはこれより月額が高くなることがあります。住宅型は介護保険の自己負担を含みません)。全国一律の公的な標準額が定められている特養と違い、費用は各施設が独自に設定しているため、「有料老人ホームの相場はいくら」と一言でいうのが難しいのが実情です。
確認のよりどころは「重要事項説明書」
有料老人ホームには、費用やサービス内容を記載した「重要事項説明書」の作成・開示が義務付けられています。月額に何が含まれ、何が別料金なのかはこの書類で確認できます。パンフレットの金額だけで判断せず、重要事項説明書まで確認する(または確認できる人に相談する)ことをおすすめします。
3タイプ共通の落とし穴:「月額表示」と「実際の総額」は違う
ここまで読んでいただくと気づかれると思いますが、どのタイプの施設でも共通する注意点がひとつあります。それは、パンフレットやサイトに書かれた「月額○万円」という表示と、実際に毎月支払う総額は違うということです。
表示の月額に含まれないことがあるのは、次のような費用です。
- 食費(施設・プランによっては別料金)
- 水道光熱費
- 介護保険サービスの自己負担分(要介護度により変動)
- 医療費・薬代
- おむつ代などの日用品・理美容代
見学のときのコツ:「この施設に入っている方は、実際のところ毎月いくらぐらい払っていますか?」と聞いてみてください。表示の月額ではなく、請求額の実例を教えてもらうことで、資金計画のズレを防ぎやすくなります。
費用が足りないとき、「持ち家」という選択肢があります
3タイプの費用を見て、「親の年金だけでは厳しいかもしれない」と感じた方も多いと思います。実際、年金収入が月13万円前後の方にとって、月15万円を超える施設は年金だけでは手が届きません。
そこで検討していただきたいのが、親御さまの持ち家を賃貸に出して、家賃収入を施設費用に充てるという方法です。たとえば年金13万円に家賃収入が加われば、選べる施設の幅が広がります。空き家のまま実家を維持するコストを考えても、有力な選択肢のひとつです。
実家を貸した場合にいくらぐらいの収入が見込めるかは、無料のシミュレーターで試算できます。また、貸す前に知っておきたいリスクや初期費用についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
・厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1506(令和8年8月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直し等)」(2026年5月29日)
・国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅について」(サービス付き高齢者向け住宅情報提供システムの登録情報にもとづく集計、2023年8月末時点)
・千葉県「有料老人ホーム施設一覧表(令和8年9月1日現在)」千葉県オープンデータサイト(公共データ利用規約 第1.0版)をもとに、当室が集計・加工(休止中の施設を除く。有料老人ホームの月額は松戸市・船橋市・柏市・鎌ケ谷市の、一覧に載っている最も低い金額の中央値。柏市は柏市の一覧もあわせて確認)
※本記事の金額はいずれも目安であり、実際の費用は地域・施設・要介護度・所得状況などにより異なります。
施設の費用と持ち家のこと、まとめてご相談いただけます
「親の年金と貯金で、どのタイプの施設なら続けられるのか」「実家を貸したらいくらになるのか」。
お金と住まいの両方の視点から、無料でご相談をお受けしています。
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